選挙雑感

安倍政権下で何かいいことあった人、というのは株屋さんと外貨長者の他にどなたかいらっしやるのかしらん。さりながら自民圧勝の事前予想。これが大きくは外れまいという感覚もあり、日本国民の考えていることがまるで分からない今日このごろ。まあともかく、争点らしきものも拾ってはみる。
アベノミクスへの審判、とまず言われ、次いて安倍晋三政権そのものへの審判だと言われる。2年間の安倍政権の間に大きく変わったことといえば、安全保障、金融政策、エネルギー政策の3点か。
安全保障:好戦的←→厭戦
金融政策:円安歓迎←→円高容認
エネルギー:原発活用←→脱原発
安倍政権は上記の左側。私の意見はむしろ右側寄り。
一つ目の安全保障について安倍政権の何よりも良くないところは、周辺の国を靖国参拝などで挑発しつつ、武力行使をやりやすい方向へ国の制度を変更しようとしているところ。自衛に関する環境を整えるというなら挑発は抑制するのが普通。安倍首相という人は国益よりも個人の趣味(靖国やら変てこなNHK会長やら)を優先する一方で、国民には国家主義的な統制を強めようとする。統治者としての資質にまず大きな疑問符が付く。
ではどうすれば? 個人的見解をいえば、日本は今後どんどん中国の影響をこうむることになるだろう。それに耐えるのは軍事力ではなく文明の問題。日本が中国とは違う文明であって併呑できるものではないということを、きちんと示さなければならない。フィンランド化というと卑屈と言われるだろうか。しかしフィンランドは結局無くならなかったし、むしろ衰えたのはソビエト連邦の方だった。領土のことで譲る譲らないというのは、ことが尖閣に限られるのであれば、さほど大事ではない。一方の文明とは何か。この局面に限っていえば、日本語のことと言って差し支えないだろう。文明の継続性は、ファンタジー的に美化した歴史を学ぶよりも、日本語をきちんと読めるようにすることから培われる。過去の日本人の書き物を誰でも読めるようにすることが重要。
二つ目の金融政策。消費増税は、上がってもしょせん3%だか5%だか。何とかなると思っていたが円安はつらい。物価は上がるが先行きもっと上がるかも分からない。円安でのインフレには給料が上がるわけもなく、多くの人々はただ困窮する。自由経済の変動相場、為替も動くのは当たり前、と言えば言えるが、今回の円安は政権が意図的に誘導しているものだから腹立たしい。潤うのは外貨に資産を逃避させていた人と、外国人相手の商売をしている人、日本で稼ぐのをあきらめたいわゆる「グローバル企業」ぐらい。東京では、外国からの直接投資という美名の下、ビルがアジア資本に買われているとのこと。日本をマネーゲームの舞台にするのがグローバル化の本旨だろうか。
三つ目のエネルギー政策。原発。誰も手を汚さずに動かせるものなら良いけれど。むかし広河隆一が写真を撮っていた。原発の汚水漏れは雑巾で作業員が拭き取るのだ、と。原発の電気やむなしという人は、雑巾を持って福島か最寄りの原発へ行ってみるのがよいのではないか。電力システム、誰かが確実に尻ぬぐいをさせられているという現実がこれほど露骨にさらされたのに、いまだに気やすく原発を使えるという人を、私はとても信じられない。
まあしかし、何よりの問題は今の自民党か。良くも悪くも主流派とは違うことを言う人間がわんさといる多様性が自民党の特徴だったはずだが、今の自民党は誰もかれも総裁さまの意向に逆らえずへえこらしているように見える。本気で首相と違うことを言えるのは小泉進次郎氏くらい(まあ、あの親父殿の息子である以上どの程度信用できるものか分からないが)。そんな政党が国家主義的というか全体主義的で歴史修正主義者の首相をいただく。これほど恐ろしいことも無いと思うのだが。