オリエント急行忠臣蔵

三谷幸喜版のドラマ「オリエント急行殺人事件」を見た。三谷幸喜の作品は古畑任三郎以外は面白く思えたことがないのだが、今回はどうでしたやら。
昭和初めの日本に舞台を移してはいるものの1夜目はほぼアガサ・クリスティの原作に忠実に。2夜目は事件に至る犯人たちの心情を描くのが主だった。個人的な感想としては、1夜目はとにかくポワロ役の野村萬斎が面白い。脚本も大体は原作通りのようで、安心して見ていられた。2夜目? 一言でいえば、蛇足。
野村萬斎は動きもセリフ回しも面白い。滑舌もいいしさすがに雰囲気がある。2夜目が詰まらなかったのは登場するのが犯人ばかりで、この名探偵の出番がほとんど無かったせいもあるだろう。
2夜目は犯行(敵討ち)に至るまでの数年間を描くのだが、ネットでは的確に「忠臣蔵」と言われていた。まったくだ。しかし忠臣蔵が面白いのは、中心人物の大石内蔵助が心情を読ませないからなのだ、と今回のドラマを見てつくづく思う。ドラマは事件のトリックの奇抜さ(少なくとも執筆当時においては奇抜だった)に比べて、犯人たちの心情や葛藤のありきたりなこと。松嶋の知的らしく見せるための単調な演技にもだいぶ退屈してしまった。むしろ「家政婦のミタ」ばりに無表情にやってくれたら良かっただろうか。
ところでクリスティのようなミステリーは今ではあまり受け入れられないのかもしれない。粗筋しか書いていないように見えてしまう。だからこそ三谷幸喜は蛇足をつけることを思い立ったのだろうが、やはり蛇に足は要らないということが分かっただけだったか。