渚にて

今年最初の読書はネヴィル・シュート『渚にて』。北半球が核戦争で壊滅した後、放射性物質で人類が滅びるのを待ち受ける南半球はオーストラリアを舞台にした物語。ぎりぎりまで普通の生活を送ろうとする人々の姿は、おそらく私たち自身が同じ境遇に置かれたとしても、そう振る舞う以外にないだろうと思えるものだ。最後の時を迎えた人々は放射線障害による死よりも自らの手による死を選ぶ(そのための薬物が政府から配布されている)。冷戦が終結して、核戦争が本当に起きるというリアリティーは後景に退いたが、『渚にて』でも核戦争の引き金はちょっとした間違いだった。人間が同じような間違いを犯さない保証はない。本当に、人類はあとどれだけ生き延びられるのやら。