このごろのこと

このところ起こっていることどもについての簡単なメモ。
◎人質問題
日本人2人がイスラム国に処刑を警告され、身代金を請求されている。2億ドルとはふっかけたもので、真面目な交渉に応じる気があるのかは疑問。ジャーナリストの後藤健二さんは気の毒。軍事会社のCEOと称する謎の人・湯川遥菜さんについては、よく分からない。何がしたかったのやら。しかしイスラム国はとりあえず部外者は人質にして身代金で資金を稼ぐという政策をとっているようだから、勢力圏に入り込んだ時点で既にまずかった。
日本政府は身代金を払えるはずはないが、安倍晋三首相が一応「人命第一」と言ったのには少しほっとした。建前は大事だ。もっとも身代金を払えない以上、交渉をしなければならないのだが窓口は限られている。こういう時のチャンネルにすべきだった中田考氏のような人を奇妙な容疑(私戦予備!)絡みで捜査対象にしてしまったことは、うまくなかった。外務省にもっと有効なコネクションがあるというなら結構なのだが。
安倍首相の中東歴訪に関しては、それが特にイスラム国を刺激したとは思わない。ただタイミングを利用された、とは言えそう。しかしもし本気で日本が安倍首相の言うように、世界での存在感を「積極的平和主義」とやらを通じて高めていこうとするなら、この手のトラブルは今後ますます起こるだろう。国民に覚悟はあるかしら。
◎新聞社襲撃と表現の自由
フランスの「シャルリー・エブド」という、風刺のイラストを載せる週刊の新聞がイスラム教徒に攻撃を受け12人死亡。痛ましいことだが、シャルリー紙は基本的に不謹慎なイラストを一所懸命載せる新聞で、そういうものも含めて自由を擁護できなければ「表現の自由」などと口にする資格は無いらしい。一種のドグマだ。その辺のことはどうも、宗教改革と市民革命を経ていない日本人には分かりにくいかもしれない。宗教は市民生活に関与しないということ、神や君主ではなく市民の理性が人の世を支配すべきだということ。そういう原則を戦って勝ち取るという経験無しになんとなく輸入してしまった私たちは、神を信じたり信じなかったりする程度にしか、理性のことも信じられないよう。表現の自由は結構だが、人を傷つける表現は自粛せよ、となるともういけない。傷つこうが何だろうが、真理と正義に奉仕する理性の活動たる表現を徹底的に主張し擁護する、という基礎が欠けている。
日本にとってはやはり、西欧よりは中国などの徹底的に世俗的な社会の方がまだ理解しやすいのかもしれない。イスラムも理解しがたいが。日本から見ると西欧とイスラムの衝突はドグマとドグマのぶつかり合いに見える。
ところで、日本(ないし中国)、西欧、イスラムのどの行き方が良いと言えそうか。うーん。そもそも日本人の持っている尺度では比較できないかもしれない。