英国EU離脱

イギリスの国民投票でEUからの離脱が決まった。どちらが良い選択なのか簡単に言えない。これからしばらくかけて手続きが進むのだろうから、詳しいことはその過程で明らかになるだろう。とりあえず現時点においてのメモ。
今回英国で人々を離脱に駆り立てた動因というのは、世界的な動きと並行したものだ。自分は何となく損をさせられていると感じている人々が、従来のエリート層や既得権益層(と信じられる人々)に向けた反発。アメリカでは共和党のドラルド・トランプ氏にエネルギーを与えているし、以前のタイではタクシン政権を支えていたのもこうした層。トルコでエルドアン政権を支えているのも、中東で「アラブの春」を起こしたのも同様のエネルギーだろう。ついでに言えば、日本で韓国・北朝鮮たたきに人を駆り立てるのも。
もっとも、「アラブの春」は中東の大部分で潰されたし、タイでは軍政がにらみを利かして地方からの動きを抑えつけている。政権が安定的なのは親イスラム政権のエルドアン大統領のトルコと、極右政党が政権を握っている日本くらいか。今の自民党憲法草案を見る限り間違いなく極右政党。この場合の極右とは、必ずしも伝統主義と言うことではなく、国家主義的・価値観統制的な傾向と政策をいう。保守反動ですらないのは、彼らが過去の伝統やらを持ち出すのは、あくまでも個人の自由を制限するのに都合がよい場合だけだから。
今回の英国の騒動は、相手がEUだけに弱い者いじめという感じはあまりない。既に英国にいる移民や難民についても特に問題が起きているという報道は目にしていないので、とりあえず静観する他はないのだが、生まれた時からEUが存在した若い人にとってはショックかもしれない。年寄りはEUなど無かった頃を知っているから、無くともやっていけるわいと思っている。世代の分断が起きるわけだ。しかし国民投票の結果もほぼ半々だし、国が割れる道理ではある。アメリカも大統領選の度に分断が深刻になっているよう。こういう、二者択一の見解がほぼ半々になる場合に、民主主義は機能していると言えるのかどうか。選択が二つしかない、ということ自体がそもそもの間違いなのではないかと考えさせられる。
価値観は多様化しているはずで、それをまとめ上げる政治的な仕組みが成立していない、というのが現実のまとめとしては良いところだろうか。まあ、極端へ流れたいという人間の欲求というか欲動というか、破壊衝動のようなものも否定できないわけだが。まとめ上げるという発想を無くして、一人一人が政府であるような状態、つまり無政府状態を前提とすれば解決することもいろいろあるだろうが、近代兵器が既に存在することを考えれば、無政府状態は人類の滅亡に直結しそう。2045年になったらAIが人類に完全に優越するそうなので、それを待つしかないだろうか。もっとも、AIの答えは「人類は不要」かもしれないが。