国立新美術館!

1月に新しく開館した六本木の国立新美術館に行ってきました。全景はこんな感じ↓
黒川紀章設計の館内は、前面の波打つガラス張り部分は吹き抜けになっていて、後方が3フロアに分けられています。下の写真は館内3階から下を見下ろしたところ。ワンフロアあたりの高さが高いので、3階でもずいぶん高いです。

肝心の展示は開館記念企画「20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語―」。この美術館はコレクションを持たないので常設展がありません。それで大丈夫なのか?と少し心配になったのは、普通の美術館ならテーマを持った企画を立てる場合には、自館の収蔵品を軸にして展示を構成するから。しかし、今回の企画はなんと展示品600点! けた違いの数です。これだけの数をテーマに沿って集める学芸員の力量があるなら、コレクションは不要かもしれません。だいたい、国立美術館は東京の近代美、西洋、大阪の国際、京都の近代と4館あって、その蓄積だけでかなりのもの。よく行く東京近代美も収蔵品のごく一部しか展示できていないわけですし、スペースだけの新館も有用なのでしょう。地方の美術館からも良い作品がたくさん来ていて、どこから来た作品なのか、収蔵館を確かめて回る楽しみもありました。宇都宮美術館や静岡県立美術館の現代美術のコレクションはすごそうだと当たりをつけるとか、セゾン現代美術館のように普段は行けないところの作品が多数出ていたり、ミサワホームとかからの出品があるのに感心したりと、興味は尽きません。
しかし、いかんせん600点は多すぎました。初めの3分の1くらいでもうおなかいっぱい。しかもこの展覧会、出品目録が無い! それは手を抜きすぎだよー。作品名とかいちいち覚えていられないし。目録代わりに2000円の分厚い図録を買うのもちょっと……。最初の最初にはサイトにも出ているセザンヌ静物画があり、だんだん「もの」の扱いが変わっていくさまを伝える──というのが初め3分の1の構成です。気に入ったのはやはり中村彝の「カルピスの包み紙のある静物」など。茨城県近代美術館の収蔵品ですが、ここから茨城には中村彝のコレクションがあるのを知りました。水戸芸術館と併せて一度は行ってみるべきかもしれません。「もの」を扱うとなれば当然出てくるピカソやブラックの静物画、ああ、坂本繁二郎静物画もあって、馬じゃない絵を初めて見たかも(^^; もうよく思い出せませんが本当に出品目録の無いのが痛い。デ・キリコの「少女の愉しみ」もありましたっけ。MOMAからの素晴らしい絵。福田美蘭のモノクロの静物画が結構人気でウケましたし、森村泰昌セザンヌのリンゴをまた見られたのもうれしかった。京都国立近代美のデュシャンのコレクションも見事でしたし、フォンタナの「空間概念──神の死」(だったと思う)も良かった……本当にきりがないし一々覚えてもいない。おそらく期間中にもう一度は行くでしょうから、また確かめてくることもあるやもしれません。
ところで展示の充実とは別に、気になることもある美術館でした。目録が無いというのはその最たるものでしたが、
ウォーターサーバー水飲み場)が無い。見るのに2時間くらいかかりかねない展示を水も飲まずに見続けるのはつらい。ペットボトルなど持ち込めないですし。
・ショップに欲しいものがない。整理整頓したビレッジバンガード(雑貨屋兼本屋)のような店で、普通あるポストカードなどがない。今回の企画にちなんだ物品は図録のみ。「これを見た」という証拠(?)としてポストカードくらい欲しい。
・フードが高い。ちなみに2階から見た2階と3階のレストランの写真↓

正確には奥上に見えるのがレストランで2階はティールームですか。さらに1階と地下にカフェとカフェテリアがあります。1階以下は比較的安いですが、それでもサンドイッチ(店で作るわけでなくビニール包装されている)とドリンクで1000円程度。2階だとサンドイッチは店で作ったものですが、似た構成で1600円くらいか。3階のランチは1800円。これがむしろお得なのかもしれませんが、えらく並びます。同じ国立施設でも芸大美術館は学食でご飯まで食べられて良かった(^^;
・トイレの表示が分かりづらい。男女色分けしないことにどれほど意味があるのか。それならスカート=女、ズボン=男みたいなアイコンも問題でしょうに。美術館なのだからいっそ♂♀マークにでもしてしまえば。
……なんか詰まらないことばかりでケチをつけていますね。まあ、出来立ての施設ですからこれから変わることもあるでしょう。今年一年は大型企画を次々ぶつようですから、今後にも期待しています。
もう一つ、文化庁メディア芸術祭10周年企画の「日本の表現力」なんて企画もやっていました。こちらは漫画とアニメとゲームの展示に、対抗するような現代美術をぶつけた企画。現代美術もけっこうインパクトがあって面白うございましたが、編年体的に並べてある漫画やアニメは人生を追体験するようで泣けるものがありました。アニメは『鉄腕アトム』から『ほしのこえ』『やわらか戦車』まで、現在の漫画のパネル表示も『エマ』のだめカンタービレ』『蟲師』『よつばと!』『おおきく振りかぶって』などなど、あまりにも「わかっていらっしゃる!」展示で、もうむしろ面白くないほど。まあでも面白うございました。漫画も読めましたし。