民主党代表選

「そんなに小沢一郎のことを気にするのであれば小沢を首相にすればいいのに」
他に言葉がない。何年か前には、これまでの政治の騒動にけりを付けるには小沢一郎が一度首相をやるべきではないかと思ったものだが、もう時を逸しただろう。
それでも、民主党内の代表候補者もそうでない議員もこぞって小沢の動向を気にする現状は異常だ。こんなことなら小沢が首相をやる方がまだマシ。刑事被告人とはいえ、イタリアの首相あたりに比べたらまずまずクリーンなのではないかしらん。
というわけで各候補者について。
前原誠司:この人、外相辞めたばかりでなかったか。どの面下げて首相を目指す。だいたい、私はこの人が何かで役に立ったという話を聞いたことがない。八ッ場ダム廃止も方向は正しいと思うが、言いっぱなしで話をややこしくして終わったのではないか。外相時代も根回しなしの強硬発言で対中関係をこじらせた、と見える。党内には一応支持者がいるみたいだから、直接会って話せばいい人なのかもしれんけどねえ。妙に脇の甘い人でもあり、首相になったらなったですぐ辞めそう。
馬淵澄夫耐震偽装の時に「きっこ」さんと連携した人か。詳しく知らない。今回は事実上の泡沫候補。次を目指す、ということかもしれないが民主党に次はあるのかしら。
野田佳彦:党の要職を経て財務相も経験、一応、首相コースをたどってきたとは言える。前原よりは良いのかもしれないが、松下政経塾と聞くと不信感がふつふつとわいてくる。
海江田万里:小沢・鳩山ラインが押すということは、たぶん素直で御しやすい人なのだろう。国会答弁で泣いたあたりにも、「やらせ」玄海の再稼働に尽力したあたりにもそんな人柄が出ているようだ(そういう意味では菅直人と正反対のお人。気が合わなかったのは分かる気がする)。器じゃない、というかすぐ辞めそう。
鹿野道彦:山形から首相候補が出るというだけで感慨深い。他の条件はすべて無視して、ただその一点において擁護したい。まあ、あんまり変なことはしないんじゃなかろうか。良いこともしなさそうだが。敵が少ないあたりは人徳か、存在感の無さか。でも新党みらいを作って自民党を飛び出したり、新進党の代表選に出たりと、過去を振り返ると意外に野心的な行動も目に付く。最後のチャンスだろうし、乾坤一擲、とはいきませんかね。
個人的には「菅直人、辞める必要あったのか」。スケープゴートと言うには我の強すぎる人なのだが、不満のはけ口にされたというのが実情だろう。小熊英二の言うように、首相を代えたところで何も変わりはしない。自民党政権だったならむしろ、事実はもっと巧妙に隠蔽され、東電はひそかに救済され、原発はなし崩し的に推進されるという、今よりなお悪い道をたどった可能性も高い。
小熊さんのインタビューはこちら。特集ワイド:巨大地震の衝撃・日本よ! 慶応大教授・小熊英二さん。ほとんどおっしゃる通りではないか。

「復興が進まない現状に対するフラストレーション、もっと何とかしてほしいという過剰な期待。それが『悪いのは政治だ』『首相さえ代えれば』という形になったんだと思いますが、実際は菅さんを降ろしたところで変わりはしないでしょう」
「首相が東電に乗り込んで幹部を怒鳴りつけたことをメディアが批判しましたが、誰ならあれ以上のことができたでしょうか。自民党だったら対応が遅れて事故が拡大し、汚染情報を徹底的に隠したかもしれません。経済産業省原子力安全・保安院の官僚や東電がみな『安全です』『想定外でした』しか言わない状況では、民主党の他の政治家でも隠蔽(いんぺい)の可能性があったと思います」

菅首相にはお疲れさまでしたと言わなければならない。人格攻撃に耐える精神力は近年の首相に見られないものだったのは確か。浜岡を止めた一点において、重要な仕事をしたと言えましょう。あんなダモクレスの剣みたいな原発、存在すること自体が間違いだし。