大阪府の動物農場

大阪府内の公立学校教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける全国初の条例が3日、府議会本会議で成立した。橋下徹知事が率いる首長政党「大阪維新の会府議団が提出。公明、自民、民主、共産は反対したが、過半数を占める維新や、みんなの党などによる賛成多数で可決された。橋下知事は、不起立を繰り返す教職員の懲戒免職を盛り込んだ処分基準を定める条例案を9月府議会に提出する方針を示している。(6月4日付毎日jp)

権力者は旗だの歌だのが好きだな。そういうものに皆が皆こうべを垂れるという光景が気持ち悪いとか、幼稚だとかいう感覚はないのだろうか。そんなに統制やら秩序やらがお好きなら、府知事も北朝鮮へ行けばいいのに。
それにしても大阪府というのは情けないところに成り下がったものだ。府知事にしっぽ振って言いなりになる人々を大勢府議にしたのだから。権力者にフリーハンドを与えるとどういうことになるか、あからさまに教えてくれますな。他の自治体はこれをもって他山の石としなければ。こういう光景はジョージ・オーウェルの「動物農場」で読んだ。反対意見をかき消す羊の群れの「異議なし!」の声。本当のところ、維新の会とやらに属する府議さんたちは、そんなに歌やら旗やらをありがたく思っているのかしらん。単に思考停止しているだけなのかな。
ところで、国旗やら国歌やらが大事でないとは私は言わない。何かを尊重するということは、たいていの場合は悪いことではないと思うし、幼稚だと言いはしたが、世界中の国に国旗や国歌があるのもまた事実で、それらを侮辱することは端的に悪いことだと思う。ただし、尊重の仕方は一様ではない。日の丸に対して頭を下げられない、君が代を歌う気になれない、という人は往々にして、日の丸や君が代についてそれなりに考えたことがある人なのだ。無関心な人々の妄従を良しとして、そうした人々の反省を踏みにじるというのは、単に横暴なだけではないか。
旗や歌は別にそれ自体ありがたいものではない。国家そのものもありがたいわけでもない。国家と私たちとの関係が価値あるものでなければならないのだ。歌や旗は、国家と私たちの関係を象徴する一つのしるしに過ぎない。権力の側からすすんで、それらを横暴の象徴にしてはならない。