怖い話

まだあまり話題になっていないようだが、11月30日付の毎日新聞に、奇妙なおわび記事が出ている。世界屈指の種苗会社、モンサント社に対するもの。モンサントが普及を進める除草剤のラウンドアップについて、健康被害を引き起こしたかのような印象を与えた、ということに関するおわび記事だ。
モンサント社は、ラウンドアップと、ラウンドアップに対する耐性のある遺伝子組み換え大豆を抱き合わせて販売している。それはもう強力に。イラクやハイチでも人道援助の美名を隠れみのに、一度使ったらモンサント社に使用権料を払い続けなければならなくなる種子をばらまいている。たとえモンサント社の種子を使わなくても、自分の作物がモンサント社の作物に遺伝子汚染された場合にさえ特許料の請求をしてくるというのだから、率直に言ってあこぎな商売だ。2011年には世界最悪企業にも選ばれており、問題企業といって差し支えないだろう。モンサントの問題については、堤未果さんの『(株)貧困大国アメリカ』に詳しい。
ところで、おわび記事は、アルゼンチンにおけるある種の健康被害と、ラウンドアップが直接的に因果関係のあるような印象を与えた、ということについて謝罪している。当該記事は日本では普通の記事だったと思う。現地の写真を撮り、話を聞き、学者の意見を聞いてまとめたというもので、マスコミに対する名誉毀損民事訴訟でも、普通は「信じるに相当な理由がある」と認められそう。それでもおわび記事を出させたところに、モンサントの強烈な意思を感じるし、怖さも感じる。
何の意思か。世界の穀物支配への意思だ。日本にもTPPを機に本格的に進出してくるのだろう。日本には足がかりもある。今の経団連の会長、米倉弘昌氏は住友化学の会長だが、住友化学は除草剤の製造でモンサントと提携している。その辺のルートを使えば、日本のマスコミに圧力をかけることぐらい造作ないのだろう。
農薬や遺伝子組み換え作物については、本当に害があるのかどうか、原発放射能の問題と同じで、学界でも世間でも意見が真っ二つに分かれている。ただここでは、あくまで保守的な立場から、従来(近代以前)の人類が食べてきたものや使ってきたものを尊重し、多様性を擁護するという点において、組み換え作物を嫌悪するし、過剰な農薬を拒否する。これらについては国内法や、せめて地方の条例で何とか規制してほしいが、TPPが成立すれば非関税障壁として撤廃させられることになりそうだ。日本人が米を食うことすら非関税障壁と言われそう。TPP、何とか破談にならないものか。関税全面撤廃も言われているようだし。