直木孝次郎『古代国家の成立』

日本の夏は読書の季節なのだなあ、と電車で隣に座った女の子が『堕落論』を読んでいるのを見て思いました。確かに夏の暑いときには、じっとして本でも読むのがよい過ごし方でしょう。各社の文庫も夏ごとにキャンペーンをやっていますし。
直木孝次郎『古代国家の成立』(中公日本の歴史2)は40年ほど前のシリーズの一部ですが、読みやすい通史がその後なかなか無いらしく、シリーズ全体がまた文庫で復刊になる模様。読んでみると確かに読みやすうございます。啓蒙書らしく語り口がよどみなく、難しい語彙も出てこない。今80歳+くらいの人は文章がうまい、と思うことが多いですが、直木氏も例外ではありません。
最近一部で「聖徳太子はいなかった(創作された)」という話が出ていますが、40年前のこの本において既に、ふつう聖徳太子に帰せられる官位十二階、十七条憲法三経義疏などがみな、「太子が作ったというのはちょっとどうかな?」ということになっています(太子はいなかった、という言い方はしませんが)。20年前の中学校では、みながっちりと「太子の成し遂げた歴史的事実」として教えてくれたような気がしますが……いったい何を教えてもらったのでしょうか。歴史はちゃんと勉強せないけませんね。本当の意味で「新しい歴史教科書」が必要なわけでもありましょう。