『絵のある人生』

安野光雅絵のある人生』(ISBN:4004308569)は、当代の人気イラストレーター・絵本作家が絵画との付き合い方を教えてくれる本。「抽象画は分からない」といった素朴な疑問にも寄り添って、素人目には変な絵との付き合い方も一緒に考えてくれます。実例としてはゴッホブリューゲルが主に登場。筆者の見方の押し付けにならないよう気を配りながら、作者の時代や生涯をなぞりつつ絵の味わい方を説いています。絵なんて見たいように見ればいい、と今の私は思いますが、「見たいように見る」までの道のりはけっこう長く、いまだ道半ばという感があります。「見たいように」を発想するにはまず、いろいろな絵にある程度慣れなければなりませんから。安野氏のこの本は、そんな「見たいように」への道筋を示す好著だと思います。美術についての本は、評論家のものはとかく難しいですし、芸術家が書くと力が入りすぎることが多いようです。好きな仕事で評価されながら(市場的にも、創作としても)、年を取って世間との距離感が程良く出てきたという筆者は、こういう案内本を書くには全く適役なのでしょう。ついでにこの本は絵の描き方も教えてくれます。年取って暇が出来たらやってみたいですねー。