帝国の記憶

日本側が中国漁民と漁船に対して行った拘置や捜査及びいかなる形式の司法措置も違法かつ無効だ。日本側は今回の事件について中国側に謝罪と賠償を行わなければならない。(毎日jpより)

今回の件で日本(国民)がショックを受けているのは、中国側が終始、日本に対する侮りを全く隠そうとしていないことだろう。阿片戦争から百数十年、中国はここに来てようやく、帝国の記憶がよみがえってきたのかもしれないと、賠償しろだの謝罪しろだのの文言を見て感じる。中国という国は、歴史的には意外に対外膨張の欲求を持たないのだが、周辺国を冊封する。威圧して朝貢国にする。朝貢とは言い条、中国の持ち出しになることも多かったようだが、それはそれとして偉いのは中国だという中華思想的上下関係は明確にしようとする。いまの中国の態度は帝国の態度ではなかろうか。
中国は今回のようなことが起きるのをてぐすね引いて待っていたのかもしれず、今さら言ってもせんないことだが、日本は不用意すぎたとは言えるかもしれない。
はっきりしたのは、日本の今の位置が、言ってみれば印パ関係におけるパキスタンぐらいなものだということ。味方らしい味方なしに、強大な相手とそれなりに渡り合わないといけないのだが。軍事的競争は不毛。外交にしても諸外国に提供できる資源・市場としての能力が違う。勝ち負けで言ったら、勝つのはまず無理だろう。仕方がない、理不尽な要求はそれなりに受け流しつつ、節を持して没落してゆく、というのが個人的には良いと思うのですが。駄目ですか、没落は。いずれは、と予見されていたことだと思うのですが。
中国共産党の寿命がそう長くはなさそうなことも、さほど慰めにはなりますまい。東アジアの未来は暗いですね。
「ああ、暗い哉。東洋よ。暗夜、いずこへ行くか。
 オレは同行したくないよ」(「安吾人生案内」より)