憲法雑感

改憲論議かまびすしい今日このごろ。目先の焦点は96条の改正要件の改悪らしい。これについては、了見がせこいというほか何もない。よろずのことに速さとか手軽さを求める昨今の風潮を反映しているのだろうが、そういう見識で国の方針を定めてよいものか。憲法が不磨の大典であるなどとは必ずしも考えないが、何でもかんでもビジネス的に、フットワーク軽く朝令暮改も辞さず、といった態度で済まされるわけではない。
私のような人間でも、改憲したい条項がないではない。特に第1章。天皇制も皇室も、国民にとってなじみ深いものであることを否定はしないし、天皇も皇后も品の良い立派な方たちなのだと思うが、特定の個人をああいうオリの中に閉じ込めるような制度は、憲法後段の基本的人権に反しているのではないか。
「第18条  何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」。久々に外国での公務に就いた皇太子妃の顔を見て、こんな条文があったか、と思い出した。オランダでの皇太子妃はだいぶリラックスした表情をしていたが、元々はああいう顔をする人だった。その人を追い詰めるものが、皇室を巡る環境にはある。敗戦に伴う華族制度や旧宮家の廃止で、皇室は本当に孤立した存在になった。それでも皇室に生まれたなら、まだ覚悟のしようというか、諦めのつけようはあるかもしれないが、外から入る人はどうなる。端的にはお世継ぎ問題にまつわる圧力が、皇太子妃の現状につながったのだろうが、追い込んだのは国民だ。国民は無自覚なまま天皇家に、常人には負い得ない何かを押しつけている。これは「苦役」ではないのか。
幸か不幸か、秋篠宮家に男子が生まれたから天皇家は存続するのかもしれないが、今のままで存在させ続けるのは、特定の個人に苦役を強い続けることではないか。深く危惧するし、非人道的な天皇制は、憲法を改正して廃止すべきだと思う。
ところで憲法改正の焦点は9条らしい。改正しなくても自衛隊が合憲というなら何を変える。普通の軍隊がほしい。自民党の言うことを要約するとそんな感じか。軍隊は国民ではなく軍隊のために戦うものだとかねて考えているし、軍は軍自体と軍需産業のために存在するのだと考えて初めて、軍産複合体が肥大化するのも説明がつく。普通の軍隊、どこがありがたいのやら。日米安保を破棄するため? 破棄したいのは山々だが、いざ破棄となるとものすごい問題が発生しそう。憲法改正以前に、長い長い準備の時間が必要だろう。まあ、自民党が考えているのはむしろ、世界各地で米軍のお先棒を担げるようにしよう、ということなのだろうが、これは論外。