佐野研二郎氏のこと

2020年東京五輪のためにデザインしたエンブレムが、リエージュ劇場のものとよく似ていると言われたデザイナー。さらに、サントリーのオールフリーの景品用にデザインしたバッグがネットで拾ってきた素材の盗用だと言われて景品の一部を取り下げる事態に。
佐野氏は我らが「つや姫」のロゴをデザインしたデザイナーではあり、頑張ってほしいとも思うが状況はなかなか厳しい。五輪のエンブレムは、別に気の利いたデザインとも思わなかったが、アルファベットをモチーフにしたデザインなら似たものがあっても仕方がない。パクリとは思わないし、それが五輪にふさわしいかどうかは別として、とやかく言われることに同情はしていた。
しかしサントリーの件はいけない。スタッフのしたことと言っているが、要するにやっつけ仕事だったのではないか。人の真価が問われるのはむしろそうした場面。ちょっとした仕事でも手を抜かずに精を出せるかどうか。怖いことだ。
隆慶一郎に「鬼麿斬人剣」という小説がある。主人公の鬼麿は、江戸時代後期の刀匠、源清麿の弟子という設定なのだが、物語は「鬼麿が清麿の遺言に基づいて、かつて清麿が日銭を得るために打った数打ち(やっつけ仕事、ですな)の刀を処分して回る」というものだった。仮にも物を作ろうという人間ならば名こそを惜しめということ。