人工知能ばやり

近ごろ都にはやる物といえば人工知能(AI)だが、その未来にまったく希望が持てないのは、入門書のつもりで読んだ松尾豊『人工知能は人間を超えるか』がひどすぎたからだろう。書中にこんなくだりがある。
「戦闘機に乗るパイロットを人工知能にすれば、パイロットの育成にかかる莫大な費用を抑えられると同時に、パイロットの命を危険にさらさないといけないという非人道的な状況を緩和できる」
一番危険にさらされているのは、その戦闘機に狙われる地べたの人々ではないのだろうか? それに「人道的」ということを言うなら、AI対人間の戦いよりは、まだしも人間対人間のほうがむしろ「人道的」に思えるのは、私の頭がとち狂っているせいだろうか。機械に人を襲わせる人間のことを考えると、伝統的な人対人の戦争を起こす連中よりもなお嫌悪感を感じる。筆者は軽々しく戦闘機の例を持ち出すべきではなかった。松尾氏は高校時代に、自分とは何かを考え哲学書を読んでいたというが、その哲学書、物を考える上で役に立っているのかは疑問。
まあ、理系の人の考えるヒューマニズムというのはその程度の物なのかもしれない。本当にシンギュラリティ(特異点。この場合はAIが人間を超えることを指す)が実現すれば、こんな人類よりはむしろマシな世界を築く可能性もあるのだろうか。